結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 約束の時間ちょうどになり、常田社長が女性秘書を伴ってやってきた。

「グランドコスメ社長の、進藤冬馬です」

 冬馬さんを見て、親世代の年齢の常田社長がわずかに怪訝な顔をする。年若い彼の登場に、侮られたと感じているのかもしれない。

 そんな固い雰囲気は、食事が始まるとすぐにほぐれていった。

「プチプラ商品とはいえ、安ければいい、見映えがよければいいとはしたくないんです。払う金額に見合う、さらにはそれ以上のものを提供する。品質はもちろんですが、パッケージの魅力も手を抜きません。社員たちは、そんな思いで商品開発をしています」

 そう語る冬馬さんの横顔は誠実そのもので、彼がこれほど熱い思いを秘めていたなんて知らなかった。

「だが、そんな純粋な思いだけではないでしょう? つい少し前に妻にねだられたグランドコスメの商品は、とにかく高価で。一年に一度の、完全予約販売だったか。プレミア感を過剰に煽っているように見える」

 ずいぶん打ち解けてきた様子の常田社長が、少しだけ意地悪な顔で試すように切り返してくる。

 思わず「あっ」と反応した私に、全員の視線が集まった。

 彼の言う商品は、毎年春先に数量限定で発売するフェイスパウダーだろう。たしかに高価なものだが、人気は高くてすぐに予定数に達してしまう。
 私も毎年購入しているもので、がんばった自分への特別なご褒美だ。

 視線の合った冬馬さんが、小さくうなずく。私の答えを求められているのだと、ゴクリと喉を鳴らす。

「あのシリーズは私も使っているので、商品の質の高さは保証します。肌が一段と明るく見えるんです。私の場合、ここぞという勝負の日や特別な日に使っています」

「じゃあ、今日もかな」

 冗談めかしてそう言った常田社長に、「もちろんです」と笑みを浮かべて返す。

 バッグから、実物を取り出して見せた。このケースを見ているだけで、不思議と緊張が和らいでいく。
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