結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「おはよう」

「おはようございます」

 今朝も、冬馬さんはコーヒーを飲みながらタブレットを開いている。
 こちらをチラッと見た彼は、いつものようにひとり分のコーヒーが残っているポットを私の方へ押し出した。

「ありがとうございます」

 お返しにと、手早くサンドウィッチを作って差し出す。今では、これがふたりの間の日常になっている。

「再来週だが」

 不意に話しかけられて、視線を上げた。

「会長の代理で、立食パーティーに出席することになった」

 グランドコスメとしての仕事ではなく、進藤ホールディングス関係のものなのだろう。

「瑞希に同伴を頼みたい。妻として」

 結婚を決めた際に約束していたことだから、受け入れるのは当然。

 でも、付け加えられた〝妻として〟という言葉に、思わずドキリとした。

「聞いているのか?」

 すぐに返事をできないでいた私に、冬馬さんが怪訝な顔をする。

「は、はい。わかりました」

 重ねて大丈夫か?と疑う視線を向ける彼に、大きくうなずいてみせた。

「詳細は後でメールをしておく。当日の衣装だが、よさそうなものを俺の方で選んでおいた。数日内に届くはずだ」

「え……い、衣装?」

 出席者は豪華に着飾らないといけないようなドレスコードがあるのだろうか。秘書としてパーティーに出席する機会は数回あったが、あくまで付き添いのような存在だ。アクセサリーくらいはつけていたが、気合を入れて着飾りはしない。

「当日は秘書課の人間としてではなく、俺の妻として出席してもらうと言っただろ? それに見合ったものをこちらで用意するから、瑞希は心配しなくていい」

「そう、ですか」

 私に任せては準備に困るだろうと、見越して動いてくれたのだろうか。
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