結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「いやあ、これはまた綺麗な奥さんだ。優秀な女性だと、会長からも聞いてるよ。結婚、おめでとう」

「ありがとうございます」

 外は梅雨真っただ中で、蒸し暑い日々が続いている。しかし煌びやかなこの会場内は、不快な天気も日頃の鬱憤もいっさい感じさせない。まるで世界が違っていた。

 冬馬さんに合わせて、笑みを浮かべながら会釈をする。さっきから同じことの繰り返しで、頬が引きつりそうだ。

 冬馬さんは、これまでもこういう会に出席する機会があったのだろう。彼を会長の息子だとはじめから知っている人が多く、好意的な言葉をかけてもらえる。

 妻にすぎない私まで持ち上げられるのは、かなり恥ずかしい。むきになって訂正して空気を悪くすることもできず、ひたすら気まずい。

 しかも、到着早々に彼から耳打ちされている。

『不仲説を払拭する、絶好の機会だ』

 その通りだと、私もわかっている。
 でも耳にかかる彼の吐息にドキドキして、呼吸も上手くできなくなっていた。

 冬馬さんに贈られたのは、ホワイトシルバーの光沢のあるドレスだ。首もとには、彼が用意してくれたダイヤのネックレスが存在を主張している。

 ヘアメイクは、冬馬さんがあらかじめ予約を入れておいてくれた。そんな細かな気遣いを見せられて、ちょっと感動したのはここだけの話。
 髪はアレンジを加えながらアップにまとめ、メイクはナチュラルだけれど華やかに見えるように仕上げてもらった。
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