結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 準備が整い、ドキドキしながら冬馬さんと合流して……と、あのときのやり取りを思い出すと、顔が熱くなってくる。
 珍しく口もとをわずかに緩めた冬馬さんは、私の頭の先からつま先まで視線を何度か往復させて満足げにうなずいた。

『瑞希に似合うと思ったが、想像以上だ』

 場にふさわしいから選んだだけじゃないの?と、あからさまにうろたえる。

『ほら、行くぞ』

 いつも不遜で冷淡な物言い機に聞こえるその言葉も、私をリードしてくれる頼りあるものに思えるから不思議だ。

 そうしてやってきたこの会場で、さっきから優秀な社員だとか綺麗だとかおだてられ続けている。
 もちろんお世辞だし、それも結婚のお祝いのうちだとわかっている。勘違いして自惚れたりはしない。

「彼女は、私にはもったいないほどの女性で」

 私がむず痒いお世辞に耐えている横で、あの冬馬さんがそんなことを言う。しかも、わずかに表情を緩めながら。
 完全に惚気ている。

「いやあ、新婚時代が懐かしくなるよ」

 奥様は今夜、別件で出席できなかったそうだ。その一歩後ろで控えているのは、彼の秘書だという。その女性からも微笑ましいとでもいうような眼差しを向けられて、ますますいたたまれなくなる。

 話を終えて数歩移動すると、すぐにほかの方に声をかけられる。

「あら、進藤さん。結婚したって聞いたわよ、おめでとう。そちらが奥様?」

 積極的な方らしく、矢継ぎ早にぐいぐいと問いかけてくる。冬馬さんと同年代の、整った顔立ちをした女性だ。有名な美容家で、以前進藤ホールディングスのサプリメントを扱う会社で共同開発をしていたはず。

「ええ、妻の瑞希です」

 私の背中に添えられた彼の手に、わずかに力がこもる。
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