結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「いつもお世話になっております」

 こんなに近づいても、彼女の顔には毛穴ひとつ見当たらなくてうらやましい。

 私の挨拶に、笑顔を返してくれる。途端に華やかさが増し、バイタリティーあふれる様子も相まってとても魅力的だ。

「こちらこそ。グランドコスメの基礎化粧品は本当に優秀よね。いつか、そちらともタッグを組めたらって思ってるのよ!」

 表立っての営業活動も嫌味に聞こえない。人気インフルエンサーでもある彼女は引く手あまたで、むしろ選んでもらえた企業側が幸運なのかもしれない。

「ぜひ。担当者から、お声がけさせていただきます」

 冬馬さんがそう言うと、「楽しみにだわ」と満面の笑みを浮かべて去っていった。

 あらためて会場を見渡す。

 今夜声をかけてきた人の中には、美容家の彼女のように妙齢の綺麗な女性もたくさんいた。それはもちろん、冬馬さんがグランドコスメの社長であり、仕事がらみの付き合いだと理解している。

 でも、裏を返せば彼はいつもそんな女性たちに囲まれていたということ。あの浮気疑惑の真相はわからないが、冬馬さんの周囲には綺麗な人がたくさんいたのは事実だ。

 新婚早々の私たちに、嫌味な態度をとる人はいなかった。ただ距離の測り方が絶妙だ。仕事関係というには少し近く、なにかがあるというほどではないという迫り具合を見せる。

 冬馬さんはそれをさりげなくかわしていたが、女性側に彼に気があるのは私の気のせいじゃないと思う。もしかしたら、彼と深い関係にあった人もいるかもしれない。

 暗い思考に陥りそうになり、小さく首振って振り払う。
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