結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
「青山君といえば、二年ほど前にグランドコスメから出たルージュの新シリーズが有名だね。君の企画だったはず」

「はい、そうです」 

 間違いではないけれど、なぜこの話題を出すのかがわからない。

「既存の高級路線や、安い価格帯のシリーズとも違い、ほんの少しの背伸びで手が届く金額のものだ。たしか、大人のご褒美をコンセプトにしたものだったな」

「え、ええ、そうです」

 進藤ホールディングスはグランドコスメのほかに、サプリメントや健康器具、医療関連の用具など、美容や健康に関するいくつもの会社を経営している。複数の分野で世界進出を果たしているし、スポーツの世界大会などのスポンサーにもなっており、海外でも社名が通用する規模だ。

 グランドコスメがメイン企業とはいえ、会長がそんな一社員の企画した商品まで把握しているとは思わなかった。

 あのシリーズは、一生おひとり様で生きていこうと決めている私が本当にほしいものを追及して企画したものだ。
 購入を躊躇するほど高価格では、継続して使用ができない。かといって中高生でも楽しめる低価格のものではご褒美感が薄れてしまい、これからもがんばろうという意欲が掻き立てられない。

 大きな仕事を終えられたときなんかに買う、ちょっと特別なコスメ。
 そのコンセプトに徹底してこだわり、使用感はもちろんのこと、パッケージも年代を問わず使えるような大人女子向けに仕上げた。人気が高く、今では定番商品としてシリーズ化している。

「その優秀さと勤勉なところを評価されて、秘書課に引き抜かれたんだったね。今はたしか、副社長付きだったかな。君のがんばりは、いろいろなところから聞いているよ」

「私なんて、まだまだですけれど」

 実績を褒めてもらえることは、素直にうれしい。
 ただ、雲の上の人だと思っていた会長にここまで持ち上げる発言をされると、喜びよりも戸惑いの方が大きかった。
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