結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 それにしても、どうして私はこの場に呼ばれたのか。理由がわからない中、ひたすら好意的な言葉をかけられ続ける状況は居心地が悪い。

「失礼なことを聞くが……、ああ、セクハラだとかパワハラだとかとは違うから、勘違いしないでほしい」

 おかしな方向に話が進み、思わず眉にしわを寄せる。とりあえず、うなずき返しておいた。

「青山さんには、付き合っている人や好意を寄せている相手はいるかね?」

「……おりませんが」

 会長の目的がまったく読めない。

「それはよかった。実はだね、君の優秀さを見込んで、ぜひ私の息子である冬馬との結婚を考えてもらいたい」

「え?」

 予想だにしていなかった内容に、目を見開く。

「結婚……む、無理です!」

 一瞬呆けてしまったものの、すぐに我に返る。慌てて首と手を振りながら、のけ反るように会長から距離を取った。

 私には、結婚に夢も憧れもない。生涯おひとり様を貫くと決めているから、全力で拒否する。

「そうだな。こちらの事情を説明しておこう」

 聞いても私の答えは変わらないと言いたいところが、相手の立場を思い出してぐっとこらえた。

「冬馬もいろいろあってな……」

 瞬時に思い浮かんだのは、あの婚約破棄だ。

「最近、グランドコスメ内で冬馬のよからぬ噂が蔓延していると聞いている。いずれグループ全体を率いていく冬馬の、信頼が揺らぐような事態は看過できない」

 社内ではすでに、彼について疑問視する声があがっている。

「そこでだ。優秀で周囲からも認められている君と一緒になれば、あらぬ噂も払拭できるはずだ。それに、冬馬の次の後継ぎのことも考えないとならんしな」

 後継ぎ!?
 
 あげそうになった声を、なんとかのみ込む。

「で、ですが、結婚って……。私なんかよりも優秀な女性社員は、たくさんいますし」

 無理だ。絶対にありえない。
 百歩譲って想像してみたが、私では釣り合いが取れない。

 それに、仕事はできる人かもしれないが、あの冷淡さだ。隣にいるなんて、息がつまりそう。
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