結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 頬が引きつってきた頃、再び休憩しようと連れていかれる。

 仕事関係のパーティーに出席したことがあるとはいえ、これまでは秘書課の人間としで添え物にすぎなかった。
 相手の情報を伝えたりその場で突発的に結ばれた約束を記録したりという役割はあったものの、表だって会話に応じる必要はなかった。

 この立場に立って、その大変さを初めて実感している。体力的にというよりも、精神的な疲労の方が大きい。すっかり疲弊して、休憩させてもらえるのはありがたかった。

「飲みすぎじゃないか?」

 相手から促されて付き合いで飲んだ分もあり、それなりの量になっているかもしれない。

「問題ないです」

 にっこりと笑う私に、冬馬さんが怪訝な顔をする。
 もうひと口と、グラスを持ち上げたところで冬馬さんに取り上げられた。ついムッとした顔になってしまう。

「酔ってるだろ」

 呆れたように言われても、それほど気にならなかった。その感覚がすでに普段の私とは違うけれど、どこかぼんやりとして些細なことだと流してしまう。

 冬馬さんは、もうしばらくこの場にいさせてくれるらしい。新婚アピールのためか、彼は私の隣を離れようとはしない。

 会場内をざっと見回す。女性は一様に華やかに着飾っている。冬馬さんがドレスとアクセサリーを用意してくれたおかげで、私もそれなりに溶け込めていたと思う。

 さらに視線を巡らすと、私たちの結婚を『うらやましい』と話していた女性を見つけた。彼女は、ひとりで参加していたと思われる同年代の男性と楽しそうに会話をしている。

「結婚、結婚って、そこまでうらやむものなのかな」

 誰に聞かせるともなく、ポツリとこぼす。
 隣から視線を感じるが、あえて振り向かない。

「そんなに憧れるもの?」

 首をかしげた途端にふらりと揺らいだ体を、冬馬さんが咄嗟に支えてくれる。本当ならすぐに体を離すべきなのに、なんとなくできないでいる。

 彼の方もとくになにも言わず、そのままでいさせてくれた。
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