結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 無責任だと思われているのだろう。これでは約束が違うと非難されるかもしれない。そう思うと、ますます目が潤んでしまう。

「ごめんなさい」

 うつむいて、身を縮こませる。
 こんな弱々しい姿は見せたくなかったのに、今ばかりはどうにもできない。

 大きな不安に襲われていた中で、背中に感じていた温もりが離れていく。
 見放されたのだろう。そうされても仕方がない言動をしているというのに、身勝手にも寂しさや心細さが込み上げてくる。

 けれど次の瞬間には体を反転させられ、全身を包み込まれていた。

「え?」

「こんな状態の妻を、放っておけるわけがないだろ?」

 それはまた、自身の悪評につながるから?

「あらかたの挨拶は終えたからかまわない。ほら、歩けるか」

 まっすぐ立つように促されるが、足もとはふわふわとしておぼつかない。なんだか眠気も出てきて、思考だけでなく視界までぼんやりしてくる。

「少し待ってろ」

 近くに用意されていたソファーに私を座らせると、その隣に立ったまま、冬馬さんがなにかをしはじめた。

「瑞希、目を開けられるか」

 いつの間にかうたた寝をしていたようだ。なんとか瞼をこじ開けようとするが、あまりうまくいかない。

「上に部屋を取ったから、そこまで移動するぞ」

 なにを言われているのか理解が追いつかないまま、とりあえず彼に促されて立ち上がる。ふらつく体はすかさず支えられ、抱き込まれるような形になりながらなんとか足を動かした。

 かなりがんばって移動し、ようやく柔らかなベッドの上に体を横たえた。目は、少し前から完全に開いていない。

「大丈夫か?」

 返事もままならず、なんとかうなずく。

「瑞希がこんなにアルコールに弱いとは思わなかった」

 普段はこれくらいでは酔わない。今夜は自分の心の触れられたくない部分を刺激されて、弱気になってしまっただけ。

 頭をなでられるなんて、いつぶりだろうか。誰にそうされているのか考えが及ばないまま、心地よくてその手にするりと身を寄せる。くすっと笑われた気がするがかまわない。

「ゆっくり休め」

 温もりが離れて行ってしまわないように、なけなしの力を振り絞ってその手に縋りつく。振りほどかれはしなかった。受け入れたとわかると、さらにぐっと手を握り込んだ。

 そうして彼の温もりを感じながら、完全に意識を手放した。


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