結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 ちょっとしたことで揺らぐ自分が、腹立たしい。彼との関係は、ビジネスライクでいないと。
 
 仕事中は、気を張っていつもの自分を保っていられた。
 私がミスをすれば、最終的には冬馬さんの評価にもつながりかねない。冬馬さんに迷惑をかけない。その一心で働き、ようやく週末を迎えた。

「この映画を見るんだったな?」

 いつもより遅い朝食の席で、冬馬さんが尋ねてきた。ランチも兼ねているつもりで、サンドウィッチだけでなく野菜をたっぷり使ったスープやカットしたフルーツも添えている。

 ここのところ冬馬さんは休日にも仕事が入っていたため、一緒に出掛けるのはあのパーティー以来だ。

「そうです。いつもありがとうございます」

 席はすでに仮抑えされており、私が返事をするとすぐさま予約を入れてくれた。

「その後は瑞希が話していたカフェなんてどうだ?」

 数日前の朝食の席で彼に聞かれるまま、気になっている程度話したことだ。それ冬馬さんはしっかり覚えていてくれたらしい。

「行きたいです! 絶品ミルフィーユを食べてみたくて」

 異性とのお出かけ先で、綺麗に食べるのが難しいスイーツは避けるべきだ。
 でもどうしても気になっていたし、冬馬さんは私の些細なことなど気にしないだろう。というより、ここで断念しては自分が彼をかなり意識していると認めているかのようで嫌。

 あくまで私は、自由におひとり様を楽しみたいだけ。
 そう言い聞かせていること自体が白々しいけれど、ここは譲ってはいけないラインな気がする。

「わかった。それじゃあ、一時間後に出発しよう」

 自然と笑みを浮かべてうなずき返したのは、映画もスイーツも楽しみだから。決して冬馬さんと出かけられるのだが楽しみだからではないと、疼く自分の気持ちなんとか静めた。
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