結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 気を取り直して、自分のケーキに意識を向ける。現金なもので、絶品のスイーツを食べているうちに、さっきの不可解な現象は頭の片隅に追いやられていく。というか、平常心を保つには忘れるしかない。

 彼の方を見られないまま、いつものようにスマホを手に取り、さっき見た映画の感想をまとめ始めた。

 でも、どうしてか集中できない。
 気持ちを切り替えて、同じ映画を見たほかの人の感想を読み漁る。
 自分では気づいていなかったが、冒頭のなにげないシーンが実はラストの布石になっているとか、原作との変更点など様々な発見があっておもしろい。

「なにをしているんだ?」

 唐突に問いかけられて、顔を上げる。私と目が合うと、冬馬さんはそれのことだというようにスマホに視線を向けた。

「えっと、さっきの映画を見た人がネットに上げている感想を……」

 あれ?と思ってテーブルを確認したが、冬馬さんの前にはパソコンも資料もなにも広げられていない。
 再び彼に視線を戻す。

「お仕事は?」

「俺だって常に働いているわけじゃない」

「そう、ですか……」

 いつも仕事をしている印象しかないけれど、とは言葉にはしない。

 それなら、ここで時間を使うのは彼にとって無駄になってしまうかもしれない。ハッとして片づけようとしたところ、冬馬さんに遮られてしまった。

「同じ体験をした夫が目の前にいるのに、顔すら知らない他人とわかり合うのは気に食わないな」

「え?」

「まあ、これまでの俺の態度もあったから責められないが」

 冬馬さんはなにを言いたのか?

「映画は楽しめたか?」

「もちろん。本で読む以上に楽しめたというか」

 彼に誘導されるように、どこがよかったのか、なにが怖いと感じたかを話して聞かせる。
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