結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
『彼女はどうも、冬馬を見かけたことがあったようでな』

 ため息が漏れる。この切りだしだけで、なにが言いたいのかを察せられた。

『一目ぼれしたと』

『一度も話したことのない相手に、よく言えるな』

 つまり、俺の外見と立場に惹かれただけ。「こんな人だとは思わなかった」という捨て台詞を吐かれるところまで見通せてしまう。

 母と父のいいとこ取りをしたと言われるこの外見のせいで、思春期の頃から散々な目に遭ってきた。見ず知らずの女子生徒に声をかけられ、追いかけ回された挙句に盗撮までされる忌々しい日々。

 気が合ったから付き合ってみた相手は、俺を見栄えのいいアクセサリー扱いする。友人に紹介したいと引き合わされた場で、あからさまに得意げな顔をする交際相手に、何度も失望させられてきた。

 次第にこちらも面倒になり、ご機嫌取りのプレゼントを適当に渡していたのもいけなかったのだろう。最後は、財布扱いだ。

 交際相手に同じだけの気持ちを返せなかった自分も悪いとわかっている。相手を調子づかせたのは、すべて自分の振る舞いの結果だ。

 プライベートで女性と接することが、だんだん煩わしくなっていく。
 ここ数年は仕事に専念したいのもあり、アピールしてくる女性をことごとくかわし続けてきた。

『話はそれだけで終わらなかったと?』

『ああ……申し訳ない』

 笹島社長から、政略結婚を迫られたのかもしれない。
 もっとも笹島奈央としてはそんな堅苦しいものではなく、俺の立場と外見が気に入ったから夫にしたい程度の軽い気持ちだっただろうが。

『笹島社長の手前、即断るのは角が立つ。息子にはもったいない話だと、遠回しに断っても奈央さんには通じなくてな。冬馬が承諾するのならならと、とりあえずその場は解散したんだが……』

 父らしくない、歯切れの悪いもの言いだ。

 うんざりするが、それも仕方がないだろう。
 ネクストアーツプロダクションは国内大手の芸能事務所で、業界内での影響力も大きい。ここにそっぽを向かれたら、ほかの事務所への依頼にも支障が出るのは間違いない。

 事情を考えたら、父の曖昧な態度も一方的には責められなかった。
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