結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 着々と追い払う準備を進めていたが、それよりも先に笹島奈央から別れを突きつけてきた。とはいえ、交際も婚約もしていないのだが。

 おそらく新しく執着する相手ができたのだろう。調査結果から、候補の相手の目星はついている。金があり、社会的な地位のたしかな見映えのいい男が。それが成就するかは、俺の知ったことではない。

 会社のエントランスという公衆の面前で、意気揚々と婚約破棄を突きつける笹島奈央の姿は、俺にとって滑稽でしかない。

 しかし、面倒なことをしてくれるものだと迷惑でもある。

 そもそも婚約の事実はなく、俺がどうしていようが不貞にならない。そう指摘をしようものならますます騒がれそうで、あえてなにも言わないでおいた。

 不貞だという彼女の思い込みは、仕事がらみ付き合いを目撃したのだろう。相手が女性である場合も多いが、必ず秘書を同伴させている。身の潔白は簡単に証明できるし、そもそもプライベートで異性と会う機会など皆無だった。

 俺のことばかりあげつらうが、彼女は自身の異性関係を知られていないとでも思っているのだろうか。

 とりあえず言いたいようにさせてやる。こちらが下手になにかを言えば逆上しかねないと、同じようなことを何度か経験してきた。
 むしろ、こういう相手には無関心を貫いた方がダメージを与えられるだろう。

 そうして散々喚き散らした笹島奈央に背を向けたところ、秘書課の青山瑞希を見つけた。

 俺に対して軽蔑を隠しきれていない目をしていたが、べつにかまわない。同じように感じている人間は、この場にたくさんいるだろう。そんなもの、仕事で実績を示していけば払拭できる。

 そう考えていたが、噂を耳にした父が勝手に動きだした。
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