結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
『冬馬もいい歳だ。真面目な女性と結婚して、家庭を築くことで悪評を払拭するべきだ』

 噂が広がるのも問題だが、父は副社長が俺を引きずり降ろそうとしていることを問題視しているようだ。
 野心家の彼は、利用価値はあるもののなかなか扱いの面倒な人物だ。

 結婚などするつもりはなかったが、ここは承諾することがベストだとわかっている。

 そこで引き合わされたのが瑞希だ。

 会長に半ば脅されるようにして渋々承諾したのだが、彼女がこの話を断われない状況にあるのはちょうどよかった。得られるメリットを考えれば、瑞希が裏切るはずがない。

 加えて、俺を軽蔑する人間が恋愛感情を抱くはずもないだろう。

 このチャンスを逃してなるものかと、契約結婚を持ちかけてすぐさま実行に移した。

 プライベートなスペースに他人が入り込むなど、苦痛以外のなにものでもないと思っていた。だが予想に反して、彼女との同居に苛立つことはほとんどない。

 瑞希は本当に俺に興味がないようで、無駄に話しかけてこない。休日はひとりで出かけて楽しんでいるようだし、俺の帰宅が連日遅くなろうが無関心。

 といっても、お互いが気持ちよく過ごすための配慮は忘れていない。タイミングが重なったからと俺の分の食器を片づけてくれたり、どうせだからと細かなところの掃除をしてくれたりする。さすがにそれを煩わしくは思わない。むしろ助かっている。

 さらにいきなり朝食を差し出されたときは驚いたが、礼を求められるわけでもなく、負担にはならない。こちらもついでだからと、コーヒーを淹れておいてやる。それくらいはわけないし、対等なやりとりに悪い気はしなかった。

 最初に彼女自身が宣言していた通り、高価なものをねだられることはまったくない。仕事関係とはいえ、俺が女性と会っていても咎めてこない。

 大した犠牲も払わないまま得たこの生活に自分は満足していたが、周りはそうではなかった。
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