結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
『新婚なのに、不仲なのか?』

『会社の前で、女性に迫られていたぞ』

 これまでとまったく様子の変わらない俺たちに、疑念を抱く人が現れ始める。
 以前流れた悪評は薄れつつあったというのに、今度はそれかとばかばかしくなる。よほど暇な人間が多いらしい。

 仕方なく、週末は瑞希の外出に同行するようになった。妻との仲を尋ねられたとき、具体的に答えられるための実績づくりだ。

 ひとりを楽しんでいた瑞希にとっては、鬱陶しかったに違いない。俺としても時間を無駄にしたくなかった。少しでも彼女の邪魔にならないようにと、外出先で仕事をするようにした。

 こんな態度を取れば気を悪くする可能性もあったが、瑞希が気分害した様子はまったくない。それどころか、彼女は彼女で好きなように過ごしている。これは好都合だと、もう何度目か瑞希を妻に選んだ自分が幸運だと思った。

 いつものごとく、映画を鑑賞した後に食事をしていた。瑞希より先に食べ終えた俺は、まだ片づいていない彼女の前でタブレットを開く。

 しばらく仕事に没頭して、キリがついて顔を上げる。目の前には、スマホを手に楽しそうに瞳を輝かせる瑞希がいた。

 仕事中は凛としている彼女だが、プライベートではずいぶん雰囲気が柔らかくなる。なにかおもしろいものでも見つけたのか、彼女はふと口角を上げた。

 これほど近くにいる夫の存在など、忘れてしまうほど集中しているらしい。
 本当に手間がかからない妻で助かると思う半面、こちらに少しも興味を示さないことをおもしろくないと感じる。が、気の迷いだろう。

 俺にとって都合がいい妻。まあ、彼女にとって俺もそんな存在なのかもしれない。

 ただそれだけだったはずの瑞希に対する見方が大きく変わったのは、副社長が出席できないと放った常田社長との会合だった。
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