結婚してもおひとり様を貫きますから~俺様御曹司は孤独な契約妻に愛されたい~
 それから十日ほどが経った週末の夜、冬馬さんが約束していたお祝いに連れ出してくれた。

 タクシーでやってきたのは、高級ホテルのレストランだ。一度は泊まってみたいと、私が以前こぼしたのを覚えてくれていたらしいく、宿泊するまでがご褒美だという。

 いろいろと意識しそうになるが、冬馬さんにそんなつもりはないとわかっている。寝室が複数ある部屋を予約したと、事前に教えてもらっている。

「どうぞ」

 先に降りた冬馬さんが、手を差し出してくれる。丁重な扱いにドキドキしながら手を重ね、私もタクシーを降りた。

 離そうとした手を、あらためてつなぎ直される。
 え?と隣を見上げたら、優しい笑みが返ってきた。

 その素敵さに呆けている間に、冬馬さんが歩き始めてしまう。離すタイミングは、完全に失ってしまった。

 エレベーターに乗り込むと、まるで周囲から守るように腰を抱き寄せられる。私の体は冬馬さんにぴったりくっついており、密着具合にそわそわする。

 今夜の冬馬さんがこれまで以上に甘いのは、もしかして夫婦らしさの演出だろうか?
 理由はどうであれ、近すぎる距離感にたまらなく恥ずかしくなる。頬の熱さと早すぎる鼓動に気づかれないことを願いながら、終始うつむきがちになっていた。

 そうして到着したレストランの洗練された雰囲気に、違う意味でも緊張する。

 今夜纏っているのは、ボルドーのシンプルなドレス。冬馬さんからこれを贈られた時点で高級なお店だろうと察してはいたけれど、想定以上でたじろぐ。私の感覚では、本当に特別な日に利用するようなハイクラスなレストランだ。

 個室に案内されると、ようやくほっとした。

 向かい合わせに着席して、窓の外に視線を向ける。周囲のビルよりもさらに高いここからは、遠くまで広がる夜景を楽しむことができた。
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