【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 彼は私の話を聞いて、自分の会社に紹介するから考えないかと言ってくれた。

 彼のいる予備校は、独身寮や住宅手当があった。夜が遅くなる仕事だからだ。

 それが何よりの決め手になった。前の会社でネックだった住宅面での費用が格段に減るので、私は思い切って紹介をお願いした。

 正社員として、昼間は事務をしながら別途夜間講師として授業を持つことも許されると言っていた。

 佐田君のお陰か、幸運なことに、その予備校に正社員として転職がすぐに決まった。

 独身寮への入寮も決まった。母の病院は近い。即決だった。

 私は蓮見ロジスティックスを退社した。

「琴乃、何かあったら必ず相談してね。本当は私と同居すればいいのに……」

「よく言う。佳純はもうすぐ同棲するんでしょう?私が彼に怒られちゃうよ」

「琴乃のことも知ってるし、大変なのもわかってるから許してくれるよ」

「その気持ちだけで嬉しいよ。今まで本当にありがとう」

「琴乃がいなくなったら、私は本当に寂しいよー」

 佳純は名残惜しそうに私を抱きしめた。私も彼女の背中を叩いて、涙を拭いて別れた。

 * * *

 私は転職し、転居も決まった。

 問題はいつ玲さんとの関係を断つかだった。

 彼との接触を断つタイミングを計っている時に、玲さんから一時帰国の連絡が入った。

 彼への連絡を控えていたせいで、彼は私を心配し、上司に反対されたのに無理やり一時帰国を決めたと言っていた。

 連絡をしないようにしていたのは、自分自身の為だった。

 玲さんを思い出すと決心が鈍るので、徐々に距離を置いていこうと思っていたのだ。

 一時帰国で再会した玲さんは、優しかった。

< 102 / 192 >

この作品をシェア

pagetop