【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 私のことを心配し、我慢するなと言ってくれた。こんな人を捨てようとしている自分を許せなかった。

 だからその夜は、私も全身全霊で玲さんを愛していると伝えた。彼と会うのはこれが最後になるとわかっていた。

 私にとって、最初で最後の人。別れても彼以上の人などどうせ現れない。彼と別れたら、一生恋愛も、結婚もしないつもりだった。

 彼を残して明け方ホテルを出た。独身寮は空港からかなり遠いのだ。

 * * *

 あれからもうすぐ二週間になる。

 彼は国際会議が終わり、イギリスへ戻れば近いうちに連絡を寄越すに違いない。

 チェストの上にある写真を見た。

 彼とこの写真をロンドンアイで撮ってもらったとき、次回他の国へ外交官として出るときは、一緒に行きたいと言ってくれた。

 それが彼のプロポーズであることは明白だった。嬉しかった。

 結婚よりも、近くで直接顔を見て暮らせる毎日が約束されたようで何よりそれが幸せだった。

 ぽたりと手の上に涙が落ちた。ぽたぽたと涙が落ちて、写真に映る笑顔の彼の顔がぼやけて見えなくなった。

 決めた時にやらないと決心が鈍る。私の手は携帯の彼のアドレスを表示した。文章を入力した。

 携帯の画面を見ながら、もう出ないと思うくらい泣きはらした目から涙が出た。人ってこんなに泣けるものなんだ。

 あれから海の向こうに住む忙しい彼とは時差もあり、画面越しの月数回の逢瀬で我慢してきた。

 やっと彼と将来を考える時が来たのに、私にはその選択は許されなかった。

「玲さんごめんなさい。私と別れてください。理由は私にあります。あなたは何も悪くない。私のことはどうか忘れて幸せになってください。今まで本当にありがとうございました。さようなら」

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