【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
プツリと電話は切れた。
僕はあの日、琴乃がまさか僕に隠し事をしているとは思わなかった。
いや、愚かなのは僕自身……琴乃に信用されていると自分を過信していた。そんな自分に対して猛烈に腹が立った。
目の前のテーブルに拳を叩きつけた。コップが落ちて割れた。
彼女が何より大切にしていた家族……。
お父さんが亡くなられてから、琴乃はお母さんと弦也君の為に、自分を犠牲に生きてきたと彼女の親友が話していた。
僕は琴乃の信用をすでにあのとき失っていた……だから彼女は何も話してくれなかった。
僕はショックでしばらく抜け殻になった。
周りは異動が延期になり本当に気の毒だと慰めたが、そんなことが理由ではなかった。
琴乃との決別が僕に与えた傷は大きかった。
だが、僕は仕事を投げ捨て自暴自棄になることも許されなかった。
近いうちに大きな国連主導の世界経済会議も予定されていたため、ここ数年で一番忙しくなった。
ある意味、仕事のお陰で忘れることが出来た。あまりに疲れていて帰ると泥のように寝てしまう。
酒ばかり飲んで、体重がかなり落ちた。目が鋭くなり、周りは腫物を触るように僕と付き合うようになった。
忙しさが一段落したころ、久しぶりに妹から連絡が来た。
家族に琴乃から別れを告げられたと先日伝えたばかりだった。
「日奈さんとはやっぱりだめだったんだね。それなのに、どうして琴乃さんはお兄ちゃんと別れたの?家族にやっぱり反対されたの?」
日奈は僕の帰国が記事のせいで延期になったことを知り、謝ってきた。
琴乃とのことも聞かれたが、別れたと告げた。