【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「家庭の事情で退職したんですが、家を探していると聞いていたので、すみません。おそらく引っ越したんでしょう」

 何か隠しているとピンと来た。彼女はこんなあいまいなしゃべり方をする人じゃなかった。ある意味鷹揚な琴乃と正反対で、きっぱりしたしゃべり方をする人だったと記憶していた。

 彼女のお母さんが関係しているんだとすると、個人情報もあるし、これ以上聞いてもムリだと思った。自分で探せばいいことだ。

「ありがとう。何かわかったら教えてほしい。僕はまだしばらくイギリス勤務なんだ」

 僕は琴乃のことを諦める気はみじんもなかった。おそらく、琴乃はお母さんの為にあの時すべてを諦めたんだろう。恋人も、仕事も、家も何もかも捨てたに違いない。

 * * *

 あれから、二年。ようやく僕の日本帰国が決まった。琴乃の調査を依頼しようと思ったところだった。

「やっと見つけた、琴乃……」

 SNSで有名予備校の英語美人講師として琴乃が紹介されていたのだ。妹がそれに気づいて帰国前に連絡をくれた。

 画面の中の彼女は、長かった髪を肩辺りでバッサリと切っていた。さすがに教師。授業映像を見ると、以前よりしっかりした大人の女性になっているように見えた。

 僕はある決意を胸に、やっと帰国の準備に入った。

 

 

 

 

 

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