【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
新しい命
新しい塾の正社員としての仕事にようやく慣れてきた。
ビジネス英語も仕事で使っていたので、そういった授業を受け持ってほしいと頼まれ、英語講師として夜の授業も週に何日か入れ始めた。
新しい生活と母の看病。玲さんとの別れもあって、ストレスのせいか、吐き気がして食欲がなかった。
だが、最近になってどうも様子が変だと気づいた。来るべきものがずっと来ていなかったのだ。
疲れやストレスで遅れることがあるのはわかっていたが、それにしても二月が過ぎている。
「まさか、妊娠?」
自分で検査薬を購入し、初めて調べた。結果は陽性だった。
あの一時帰国の夜だとしか思えなかった。
「どうしよう……」
別れの際、あんなひどいメールを送った。今さら玲さんに伝える勇気もなかった。
それにもしかすると、今頃日奈さんとやり直しているかもしれないと思った。
玲さんは運命の人だとわかっていた。彼以上の人が今後現れることは一生ないだろう。
彼との子をもし本当に授かれたとしたなら、私は正直嬉しかった。
「赤ちゃん、来てくれてありがとう。あなたの為なら私は何でもできる。きっと大丈夫だよ」
そうはいっても、彼はもちろんのこと、自分の親兄弟に言うこともできない。
不安になってしまい、私は佳純に連絡をした。そうして事情を全て話した。
「わかった。明日一緒に病院へ行ってあげる」
「お母さんの入院している病院に産婦人科があるの。そこに行くつもりなんだけど、いい?」
「琴乃、子供が出来たなら玲さんに伝えたほうが絶対いいよ。喜んでくれるでしょ?」