【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「弦也君からお姉さんの話は聞いていたんです。でも、外交官なんてきちんとしたお仕事をしている人が、お姉さんを騙したりしないだろうし、お姉さんだってそんな人好きにならないでしょって話したんです」

 彼女の言葉に嬉しくて涙がこみあげてきた。

「ありがとう。その通りよ。彼は当時出張中だった。それでもメールでゴシップを否定して謝ってくれた。その後、一時帰国もして釈明してくれたのよ。彼は何も悪くなかった」

「そうだとしても、お母さんは絶対、海外に行くかもしれない人と姉さんが交際するのを許さなかったと思う」

「そうはいっても、お姉さんに彼のお子さんが出来たんだからあの頃とは話が違う。思い切って彼に連絡してみたらどうですか?」

 私は頭を左右に振った。

「もう彼の連絡先は削除した。それに彼だって新しい人生を歩んでいるだろうし、教えたからってお母さんの問題が解決するわけじゃない」

「姉さん。じゃあ、お腹の子はひとりで育てる気?」

「ええ、最初からそのつもり。妊娠してすぐに引っ越したんだけど、サポートしてくれる同僚夫妻の近くなの。一年前に赤ちゃんが生まれていて、色々相談してる。今の会社は仕事も融通が利くからなんとかなる」

 ふたりはびっくりしていた。

「姉さん、僕ら結婚したら母さんの面倒をみるつもりなんだ」

「え?」

「母さんには彼女を紹介してあるし、気に入ってくれてる。今まで姉さんに何もかも頼ってきた。今後は僕が母さんの面倒をみる。姉さんは子供と一緒に自分の人生を生きてほしい」

 驚いた。あの小さかった弦也からこんな言葉を聞けるとは思いもしなかった。気持ちだけで本当に嬉しかった。でも新婚早々なのに、そんなこと彼女が可哀そうだ。

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