【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「好きにしなさい。ここまできたら身体を大切にして元気な子を産んで頂戴。子供には何の罪もない」

「ありがとう、お母さん」

「琴乃。お前は子供のことだけ考えなさい。私のことはもういいの。元気になるまで少しだけ弦也達に甘えさせてもらいます」

「そうだよ、姉さん。母さんのことは任せて身体を大切にしてよ」

 母は弟の結婚後、彼らの新居近くに家を借りた。私はその後、女の子を無事に出産した。

 佳純も、母も手伝いに来てくれた。佐田さん夫妻のことも紹介した。

 乃蒼(のあ)と名付けた。女の子のせいか、父親である玲さんの面影がかなり濃い。目元や口元が似ているのだ。成長するにつれてどんどん彼を思い出す日が増えた。

 * * *

「おはよう、琴乃さん、乃蒼ちゃん」

 マンションのエレベーターを降りると、そこには佐田さんの奥さんである彩菜さんと娘の咲ちゃんがいた。

「のあちゃん、おはよー」

 咲ちゃんが乃蒼に笑いかけた。

「まま、さきちん、いたー」

 乃蒼は私の手をパッと放して、咲ちゃんに向かって転びそうになりながら走って行く。

 妊娠を佳純に話した後、佐田君夫妻にも事情を説明して相談した。

 ふたりは同情してサポートを申し出てくれた。相談してすぐに二人の住んでいるマンション内の近くの部屋へ移り住んだ。

 私はそのころ出産したばかりだった彩菜さんを助けながら、妊娠中に気を付けた方がいいことなどを彼女に教えてもらった。

 彼女も産休をとるまで予備校で講師を勤めていたので、出産経験のある職場の女性を紹介してくれた。そのお陰で働きながらの妊娠生活も無事に乗り越えられた。

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