【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「弦也……そうじゃない、私が臆病だったの。いつも彼とお母さんを天秤にかけてた……結果もわかっていたの。妊娠は偶然よ。あなたが気にすることじゃない」

「僕はもうすぐ父親になる。今の藤堂さんがどういう状況かわからないけど、乃蒼を認知しない人ではないだろう。僕は母さんの為に姉さんを犠牲にしたんだ!」

 嗚咽する弦也を抱きしめた。こんな風に苦しめたくなかった。

「弦也。それは違う。あなたが責任を感じることじゃない。私が選択したの。今後、お母さんのことは私が引き受けるから、あなたは彼女のことをサポートしてあげて。妊娠中は、身体も、心も不安定になる」

 母の看病もするようになり、私の生活は激変した。乃蒼を保育園に預けている昼間、看護休暇を使って母を見舞いに行っていた。

 だが、母の病状は思わしくなかった。私達が玲さんに乃蒼のことを連絡するんじゃないかと心配していた。

 いくら連絡しないと約束しても、疑心暗鬼になっていた。

 その都度興奮してしまい、入院が長引いた。

 看護休暇も使い切ってしまった。このままではお給料が減ってしまう。予備校からは、夜の講師を引き受けないかと提案された。だが、乃蒼の預け先がない。

 そんなとき、彩菜さんから思いもしない方法を提案された。

 元々、彩菜さんは有名な古典の講師だった。現代文の講師をしている佐田君と恋仲になって結婚したと聞いている。

 出産後、佐田君に夜の授業があるので、講師に復活できなかった。

 昼間の短時間事務をしていたが、やはり講師に戻りたいという。この際、夜間お互いに子供を預かって、別な曜日に授業をいれないかと提案してくれた。

 素晴らしい方法だった。私はすぐにそれでお願いした。

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