【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「あのあと、あなたの上司だという女性が本部長はセクハラの常習犯に見えるから、きちんと自分を守るために会社へ告発しろって助言してくれたんです」

「あはは、そうだったんだ……香椎さんらしいね……それで君は告発したの?」

「あ、はい。戻って上司にようやく勇気を出して伝えました」

「そうか、それはよかった。でも君が告発しなくても、僕が蓮見商事の知り合いに少し話しておいたんだ。だから処分はすぐにおりる。君の今後に心配はいらないよ」

「どなたかとお知り合いなんですか?」

「仕事上、蓮見商事本社に知り合いがいるんだ」

「そうだったんですか」

「それにしても君、セクハラされたのには理由があるかもしれないな。さっき見ていたけどちょっと隙がありすぎる。まずは髪をおろしたほうがいいよ。白いうなじが見えてちょっとセクシーだ」

「え?やだ、うそ……」

 私はうなじを抑えた。

「日本の若い女性がひとりでこんなところまで来ているのも珍しいし、狙われたのかもしれない。気を付けた方がいい」

「はい……」

「若い日本女性はターゲットになりやすいんだ。日本女性はどこか奥ゆかしくて強く出るのが苦手な人も多いからね」

 私はびっくりして、急いでまとめて結っていた髪を下ろした。

「すみません」

「謝ることはない。それより君はどうしてここに?」

「休暇です。明日ロンドン近郊で用事があってイギリスへ来たんですけど、ウインブルドンはずっと来たかったから先に回ったんです。あの、あなたは?」

「僕も休暇でここに来たんだ。でも僕はこっちに住んでる」

「え?」

 首をかしげてこちらを面白そうに見ている。

「僕は普段ロンドンで働いでいるんだ。この間はたまたま仕事で日本へ出張していたんだよ」

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