【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「蔵原、まさか引っ越しする気か?おい、そこまで思い込むことはない。少し落ち着け。何でも一人で抱えこむな!お前がそんなでは、乃蒼ちゃんが可哀そうだ」

「大丈夫よ。乃蒼と一緒にひとつずつ乗り越えていくつもりよ」

「蔵原……」

 少し遅れて出てきたランチを時計を見ながらふたりで急いで食べ始めた。

 * * *

 HPやSNSで流す模擬授業を担当したことで、私の授業を受けたいと言ってくる学生が突然増えた。

 お給料もアップした。だが、いいことばかりではなかった。

「蔵原先生、美人講師でハッシュタグがついてうちの予備校のSNSで拡散されてますよ」

 隣の先生が私に携帯を見せた。驚くことに、私の講義中のアップ写真が拡散されている。

「気をつけてくださいね。最近はこんなことがあるから嫌になりますよね。上に相談しておいて、削除お願いしたほうがいいですよ」

「いやいや、蔵原先生目当ての生徒も来るから、なかなか削除しないんじゃないですか」

 隣にいる少し年配の男性講師が目尻を下げてにやにやしながら言う。

「削除お願いしてきます」

 私は立ち上がって、広報担当室へ向かった。

 ところが、すでに拡散されている部分は宣伝にもなっているのでと説得されてしまった。

 これ以上こういうことはしないように生徒へは注意しますとだけ言われた。

 SNSの威力を知ることになるまで時間はかからなかった。

 夜の授業を終えて帰る途中だった。後ろから気配がして、暗がりから人が出てきた。フードを被った男性だった。

 怖くてびっくりした。私の目の前に立って、彼はフードを取った。

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