【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「うそだろ、婚約者?!」

 男性は悪態をつきながら走って逃げて行った。

「大丈夫か、琴乃。けがはないか」

「大丈夫です。ありがとうございました」

 私は彼と目を合わさないようにして頭を下げた。、心を鬼にして、すぐに後ろを向いた歩き出した。

「琴乃、待って」

 大きな声に私は立ち止まった。顔を見たら揺らいでしまう。振り返らずに返事をした。

「玲さん、あなたも私を待ち伏せしていたんですか?」

「琴乃。久しぶりに会ったのに、それはないだろう」

 振り向いた。彼の瞳が揺れている。私の心が痛みで叫びだしそうだった。

「ごめんなさい。でもお元気そうでよかった。それじゃ……」

 私はもう一度踵を返した。玲さんの鋭い声が私の足を止めさせた。

「僕があんな別れ方で泣き寝入りするとでも思ったか?いずれ君を探すことくらいわかっていただろう」

「今さらですか?……あれから大分経ちました」

「僕は最近までずっとイギリス勤務だったんだ」

「え?!でも、もらった手紙は国内便でした……」

「あの手紙を読んだんだな。一時帰国の際に出したんだ。返事がないから会社に電話して、君の友人を通じて退職を知った。それも知っていたんだろう?」

 後ろから聞きなれたパタパタという足音がした。

「やっぱし、ままー、おかえん、なさいー」

 乃蒼が転がるようにかけてきて、私にしがみついた。

 振り向くとそこには佐田君と咲ちゃんがいた。

 咲ちゃんが玲さんを指さして言った。

「パパ、あの人誰?」

 玲さんの顔色が変わった。私は急いで乃蒼を抱き上げた。

「その子は……君の?」

 玲さんの声が震えていた。

「そう、私の子です。今日はありがとうございました。ここで失礼します」

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