【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 玲さんは私達の後ろに見える佐田君をじっと見つめて、会釈をした。佐田君も黙って頭を下げた。

 玲さんは背中を向けて戻って行った。

「まま、ごはん。はやくー」

 指を引っ張る乃蒼の顔を見て、私は涙が出た。

「まま?どしたの?」

 後ろから佐田君が来た。

「彼が……もしかして、そうなのか?」

 私はうなずいた。

「暗がりだったが、遠めに見てもいい男だったな。あれじゃ、蔵原も忘れられないはずだ」

 私は急いで涙をぬぐった。

「……まま?」

「大丈夫よ。乃蒼ただいま。いい子にしていたかな?」

「のあ、いいこ」

「そうだ、二人ともいい子だった。とりあえず、入ろう」

「わーい、ごはん、ごはん」

 咲ちゃんと乃蒼は手を繋いで入って行った。

 玲さんは乃蒼だけではなく、佐田君と咲ちゃんを見て、もしかすると勘違いしたかもしれないと思った。

 翌日、待ち伏せされたことを予備校に報告した。すぐに対策をしてほしいと頼んだ。すると、担当者からこう言われた。

「蔵原先生に連絡しようと思っていたんです。昨日は大変でしたね。今日は大丈夫ですか?」

「どうして知ってるんですか?」

「夕べ蔵原先生が不審者に絡まれているところを助けたという男性から連絡を頂きました。不審者の音声や画像を持っているそうです。先生の連絡先が分からないので伝えてほしいと言われました」

「ええ?!」

「先生、連絡しても大丈夫ですか?」

「いいえ、その人の連絡先を教えてください。夕べは娘がいてきちんとお礼が言えなかったんです。私の方でお話します」

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