【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 玲さんは顔色を変えた。

「いないって、琴乃、まさか……」

 私は玲さんの言葉を遮った。

「あの頃、母のことで大変だった時に私を支えてくれた人がいたんです。乃蒼はその人の子です。でも結婚に反対されて、私は未婚の母になりました」

「信じられない……僕はあの頃、君が何か隠していると思ってわざわざ一時帰国したんだ。全て話してほしいと言ったのに、なぜお母さんが僕を誤解して倒れたことを話してくれなかったんだ」

「それは、あの時にはもう、私の中で決着がついていたからです。その頃、私はすでに玲さんと別れる決心を固めていました」

「どういうことだ?!そんなそぶりもなかったじゃないか。それどころか君はいつもより僕に甘えていた。僕はすっかり騙されたんだな……」

「本当にごめんなさい、もう会えないと思っていたのに、玲さんが一時帰国してくれた。あのときは、本当に嬉しくて、気持ちが抑えられなかった。私は最低です。だからもう忘れてください」

 がたがたと玲さんのグラスを持つ手が震えている。私はあの夜心配してくれた彼に、母の状態を何一つ言わなかった。彼の信頼を裏切った。

 こんな彼を見るのは初めてだ。辛すぎてこの場から逃げ出したかったが、彼の左手は私の手を掴んだまま離さない。どうにかなりそうだった。

 彼は私を観察するようにじいっと見つめた。私は目を反らした。

「やはり君は僕に気持ちがありながら、お母さんの為、勝手に僕へ別れを告げたんだな」

「ごめんなさい」

「いや、君だけのせいじゃない。僕も仕事にかまけて、君のお母さんのことを先送りにしていた。僕が悪いんだ」

「玲さん……あなたは悪くありません」

「そのことはもういい。それより、君の子の父親はどこのどいつだ?」

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