【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「それは……教えたくありません」

「どうして?」

「玲さん、そろそろ私失礼します……娘を迎えに行きます」

「……わかった」

 急に物分かりが良くなった彼は、私の手を放してくれた。

 ところが店を出たとたん、玲さんは私の手を握りなおした。

「玲さん、何してるの!」

「琴乃。君は元々素直だ。隠していることも近いうちに全部話してもらう。今日は君の子と話がしたい。昨日は暗くてよく顔も見えなかった。君の子ならさぞかわいいだろう」

「玲さん!」

 嫌な予感がした。

 私は彼の手を振りほどこうとした。だが、彼に指を絡めて繋がれてしまった。彼は上機嫌だった。

「君は未婚だとわかった。昨日は絶望していたが、僕にチャンスが巡ってきた。嬉しいよ、琴乃」

「私は子供がいるんです。それにおつきあいしている人がいたらどうする気なんです?」

 彼は余裕の笑顔で私を見下ろした。

「琴乃の目は僕をまだ見ている。つき合っている奴なんているわけがない。もう嘘はやめるんだ」

「どうして……!どうしてそんな風に言えるの?」

「僕にとって琴乃は唯一だから、おそらく琴乃にとっても僕は唯一なんだ。昔二人でそう話しただろう?」

 確かにそう話した。でも私は別として、今の玲さんにとって、彼に何も話さず、勝手に別れた裏切り者の私が唯一なんだろうか?

「玲さん、なんだか性格が変わりましたね。昔より強引になりました」

「僕をこんなふうに変えたのはどこの誰だろうね?」

 色気を含んだまなざしが私を射抜いた。彼は私の手を引いて細い道に入って行った。

 そして左手で私の腰を掴み、右手で腕を引いてぎゅっと胸に抱きしめた。

 懐かしい彼の香り。涙が出そうになったが、彼のために心を鬼にした。

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