【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「聞いてはいましたが、本当にこんな道で乗馬しているんですね」

「うん。ここはそういうところだよ。とりあえずツアーで疲れたし、のどが渇いたからよかったら一緒に少し休まない?」

「はい」

 ドッグ&フォックスというホテルも併設しているパブに入った。

 ビレッジの中心地にあり、ウッド調の店内には暖炉も兼ね備えてある。

 外が見えるテラス席に座ると、馬に乗ってウインブルドン・コモンに向かう人が見えた。

 ウインブルドン・コモンは近くの有名な広い公園だ。

「僕は今日のうちにロンドンへ戻るから夕方の便で帰るつもりなんだけど、君は泊り?」

「いいえ、私もそのくらいにはロンドンへ戻るつもりでした。ロンドンで泊まっています」

「良かったら名前を聞いてもいいかな?」

「あ、はい。蔵原琴乃といいます。ご存じかもしれませんが、蓮見ロジスティックスに勤めています。あの、あなたのお名前を教えて頂いてもいいですか?」

「ああ、ごめん」

 カバンから彼は名刺入れを出して一枚私に向けて机に置いた。藤堂玲と書いてあった。

「わー、本当にイギリス大使館の書記官さんだったんですね」

「嘘だと思ったの?そんなわけないじゃないか。大体あのパーティーは外務省が計画したものなんだよ」

 そういえば、外務省が招待先を選んでいると聞いていた。今回は蓮見商事から頼まれて本部長が出席したのだ。

「蔵原さんはいくつなの?」

「私ですか?25です。あの藤堂さんは?」

「僕は28だよ」

 この間はもう少し上に見えたが、今日は年相応に見える。やはり服装や雰囲気が違うからかもしれない。

「君もあそこにいたってことは、今現在テニスをやっているか、経験者とかかな?」

「はい。中学、高校とやってました」
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