【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
最後の日
玲さんは有言実行だった。
それから何度も乃蒼が起きている時間にわざとビデオ通話をしてきて、私の仕事のスケジュールを確認すると、乃蒼と公園で遊ぶ約束をした。
そうやって、約束の日の夕方は、私達を保育園近くの公園で待っていた。
「れいくんだー」
「乃蒼、おかえり。待ってたよ。公園行こうか」
「いく、あそぶー」
乃蒼はすっかり玲さんに懐いてしまい、私は本当に困っていた。
「玲さんってば、平日なのに、お仕事はどうしたんですか?」
「お仕事なんてどうでもいい」
「玲さん!」
「もう僕は間違わない。仕事なんてイギリスで死ぬほどやってきた。ひと月ずる休みしたって、クビにならない」
「何を言ってるんですか!」
「仕事より大事なことがある。そうだ、この間、乃蒼がママのオムライス美味しいよって教えてくれたんだ。一緒に食べようって誘われた。だから約束した」
「私に内緒で約束とかおかしいじゃないですか」
「僕らは友達だからね。ママに内緒で約束もする」
彼は乃蒼を使って私を零落する気だとわかってはいた。
乃蒼は彼を未だにお友達だと思っていて、パパだとはみじんも思っていないだけ救いだった。
そのせいで、私も変な意味で安心していた。
いつも例の公園で遊んで、ご飯を食べて帰るだけなのだ。乃蒼にせがまれても、決して泊まったりはしない。
この間も、乃蒼は咲ちゃんのうちに行って、玲さんのことをお友達だと言ったらしい。
それにしてもこのままではまずい。
「もう待ち伏せしないでって言ったじゃないですか!」
「わかった。もう来ない。その代わり今度の休み、一緒に遠出しないか?乃蒼と遠足に行く約束した」