【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 母の病院近くの校舎で英語講師に空きが出たと教えてもらった。近いうちに引っ越しするため準備をはじめるつもりだったのだ。

 * * *

 宿泊先は旅館だった。離れがあって、家族風呂までついている。部屋は二部屋に分かれていて、寝室と広い和室がついていた。

 乃蒼はお風呂に入ると、夕飯までの間は部屋を走り回って遊び、ご飯を食べるとコトンと寝てしまった。

「琴乃、これを見て」

 乃蒼が寝たあと、彼はかばんから大きな封筒を出した。彼はそれを私に渡した。彼の結婚相手だろうか?

 緊張しながらその茶封筒を開けてみると、そこにはDNA鑑定遺伝子検査の結果表がついていた。

「玲さん、これ……!」

「琴乃、乃蒼を迎えに行った最初の日、君に内緒で乃蒼の髪の毛を一本もらってきた。僕の髪と鑑定した。乃蒼は僕の子だね?」

 目の前には法的鑑定結果99パーセントとあった。衝撃で息ができない。

「……」

「最初会ったときから、僕の子じゃないかと思った。君に聞いても素直に答えてはくれないだろうし、君のご家族と会う前に、このことだけはきちんとしたかった」

「玲さん、ごめんなさい!勝手に産んだことは謝ります。でも……乃蒼を私から取り上げないで!」

「何を……言ってるんだ」

「玲さんは日本にいる間、次の海外渡航に向けて結婚するんでしょう?私は母がいるから無理。でも玲さんは乃蒼が可愛いのね。自分の子だもの、当たり前ね。それであの子と仲良くなって引き取りたいんでしょう?」

「琴乃!」

「私はあなたの妻にふさわしくありません。こんな勝手なことをして、玲さんのご家族にも顔向けできない。でも、私は乃蒼がいたから生きてこられたんです」

 玲さんは急に私を抱き寄せた。

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