【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「わかってる……乃蒼は僕の分身だ。僕の代わりに乃蒼は君を支えていたんだね」

「そうです。乃蒼のふとした時に見せる仕草や目があなたに似ていて、私は救われました」

 泣きながら彼を見上げた私の頬を、彼の長い指が優しく撫でた。

「僕はね、そのことに気づいてほっとした」

「え?」

「君は僕の前から完璧に姿を消した。僕はおかしくなりかけたのに、君は平気なのかと思う度ずっと苦しかった。でも違った、君は乃蒼を通して一生僕を見ていくつもりだったんだとね」

「玲さん……ごめんなさい……」

 彼は私をぎゅっと強く抱き寄せた。そして耳元に唇を寄せて言う。

「ねえ、琴乃。君が僕と結婚してくれなかったら、僕は誰とも結婚しない。言っておくけど乃蒼がほしいからじゃない。僕の最愛の人は琴乃、君だけだとわかっているからだ」

「玲さん!」

「琴乃、乃蒼をいい子に育ててくれてありがとう。そろそろ乃蒼にパパをあげないか?乃蒼はパパを欲しがってる」

 その言葉にまた涙腺が崩壊した。

「……ううっ……玲さんに、あの子、パパのこと何か言ったの?」

 乃蒼は私にパパのことは言わなくなっていた。

 あの日、私は泣きながら乃蒼に佐田君をパパと呼ばないでと頼んだ。

 乃蒼はママ泣かないでと言った。何か感じたんだろう。その後、佐田君をパパと言わなくなった。

 乃蒼はまだ小さいのに、私の様子を見て約束してくれたんだと思う。

「泣かないで、琴乃……」

「乃蒼……ごめんね……ママは最低……ずっと我慢させてたなんて……」

「琴乃、君のこの涙も今日が最後だ。明日から、僕らは家族になる準備をはじめよう。結婚しよう、琴乃」

「玲さん、無理よ!……んっ」

 彼は私の言葉を唇で塞いだ。

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