【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「乃蒼、おいで」
乃蒼は玲さんに抱かれて、ぱぱ、ぱぱと何度も言いながら嬉しそうにしている。玲さんは乃蒼をぎゅっと抱きしめた後、乃蒼を高くもちあげた。
「乃蒼、パパだぞ」
「ぱぱ、れいくんぱぱ」
「そうだ、玲君はパパなんだ」
私は二人を見ながら涙がこらえきれなかった。
* * *
乃蒼は車に乗ると、興奮して疲れたのかすぐに寝てしまった。家について、玲さんは乃蒼をベッドに寝かせると、私の横に座った。
「蔵原琴乃さん、僕と結婚してください」
「玲さん!」
私の返事も聞かず、彼は私の左手をもちあげて、箱から出した指輪を薬指にはめてしまう。あまりの美しさに目が吸い寄せられた。
「これ……いつの間に?」
玲さんは苦笑した。
「それを聞く?もう三年以上前に準備していたものだよ」
「!」
「琴乃。随分と遠回りしてしまった。だって、最初にイギリスへ来てくれたときから、僕はこうなるとわかっていた」
「玲さん。私もわかっていました……でも私はあなたを欺いて母を選んだ……それなのに、あなたは乃蒼を私に残してくれた」
玲さんは私の両手をぎゅっと握った。
「乃蒼のことを知って、急いで準備は進めてきた。それとうちの家族に事情は話してある。母は乃蒼の写真を見て泣いていた。僕の小さい頃の面影があるらしい」
「ご両親は私のことを怒っているんじゃないですか……」
「怒られたのは僕だよ。家族は皆、君に会って謝りたいと言っている。でもまずは君のお母さんに結婚のお許しをもらうことが先だ」
「でも……」
「昨日も話したが主治医の先生と面会して、お母さんと会う前の準備をはじめてる。まず、これをお母さんに渡してほしい」