【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 封筒に入った手紙を渡された。私に内緒でいつの間に、弟は何も教えてくれていなかった。

「手紙はいいかもしれません。突然会うのはリスクが高いし、電話も出たくないと言いそうです」

「主治医の先生から勧められた。手紙を読むときも先生がついていてくれる」

「玲さん、どうしてそのことを先に教えてくれなかったんですか?母のことは大分前から準備してくれていたんですね」

「君の真似をして秘密にしてみた。琴乃、ひとつ約束して。誰が何と言おうと、もう僕から逃げないこと」

「玲さん……」

「不安があるなら僕に話すこと。ひとりで決めないこと」

「本当にごめんなさい。もうしないわ」

「君は昔から何でも抱えすぎだ」

「そうですね。わかってはいるんです」

「そのことで君を責める気はない。側にいてやれなかった僕も悪いんだ」

 彼の肩にもたれかかった。玲さんは私の肩を抱き寄せた。

「私、側に玲さんがいると安心できる。もう大丈夫、ひとりじゃないんですよね?」

「その通り。僕らには乃蒼という娘もいる。それとね、琴乃。弦也君に聞いたけど、君はお母さんに僕の子を妊娠して嬉しかったと言ってくれたそうだね?」

 こくんと頷いた私を玲さんはぎゅっと抱きしめてくれた。

「君は僕と一緒に海外へ行くことがお母さんの病気によくないとわかっていて、僕を諦めた。それでもお腹の子を諦めることはしなかった。君の気持ちが確信出来て嬉しかったよ」

「あなたを忘れられないとわかっていたし、今後あなた以上の人が現れないとわかっていた。でもそれは私の身勝手。乃蒼からみたら父親を奪うことだった」

「乃蒼の幸せを考えるのは親である僕らのすべきことだ。家族で一緒にいることは当たり前のことだよね」

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