【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「乃蒼ができたのは偶然よ。でも私は感謝してる。乃蒼がいなければ、彼を失う悲しみを乗り越えられなかった」

「琴乃!」

 母は、本心を言い出した私を見て驚いて震えだしたが、先生が呼吸を促した。すると徐々にまた落ち着いてきた。

「もう大丈夫ですね?さあ、琴乃さんが勇気を出すからお母さんも勇気を出して聞いてあげましょう」

 先生が手紙を出した。

「蔵原さん。この手紙を読んで下さい。大変失礼ですが、蔵原さんの安全の為に僕が先に目を通させてもらいました」

 そう言うと、お母さんに玲さんの手紙を渡した。

 そこには、彼が私と出会ってからのことが書いてあった。3回続けて偶然会ったこと、会うたびに気心が知れて、私の帰国前に将来を約束したことなどが丁寧に書かれていた。

 また、報道で私やお母さん、弦也に心配をかけたことを謝っていた。事実無根で、私だけを愛していると書いてあった。
 お母さんの手は震えていた。私はお母さんの背中を支えた。

「信じられないわ……」

「蔵原さんが信じられなくてもそれが真実なんですよ。お嬢さんの気持ちを聞いてあげましょう」

「彼は乃蒼と会ってすぐに自分の子だと気づいたらしいの。乃蒼もなぜかすぐ玲さんに懐いてしまった。二人は親子なんだから当たり前なのよ。お母さん、乃蒼のためにも彼とやり直したいの」

「琴乃……」

「お母さんがよくなるまで私は側にいる。彼はしばらく日本勤務なの」

「でもそうしたら……」

「今後もし、海外に行くなら家族で話し合うつもりよ。弦也の側にお母さんが残るか、私と一緒にお母さんが来るか、その時の状況で選択してほしい」

「ひどい……先生までぐるになって私をひとりにするのね」

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