【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「蔵原さん。そんなわけないのはわかっているでしょう?」

「先生……」

「不安はお薬やリハビリで改善します。ご主人の事故も偶然で、必然ではありません。蔵原さん。私を信じて心のケアとリハビリをはじめてみませんか?」

 その日から一週間後。玲さんは母と面会した。

 謝り続ける彼に、母は何も言わなかった。だが、彼を責めることも、興奮することもなかった。

「乃蒼はとてもいい子に育っています。僕の子だとわかっていながら愛情を注いでくださったお母さんのお陰です。本当にありがとうございました」

「乃蒼には……伝えたの?」

 母は初めて口を開いた。

「はい。琴乃さんと一緒に僕が父親だと伝えました」

 母はそれを聞いて顔を上げた。

「そう……乃蒼は喜んだでしょうね」

「お母さん!」

「乃蒼にパパって何と聞かれたことがあったの」

「え?!」

「乃蒼は琴乃にそっくり。小さいのに母親の顔色を窺い我慢している」

「お母さん……それは!」

「琴乃。お前が私を見ながらずっと我慢しているのを知っていた。藤堂さんあなたのこともそうです。ごめんなさい……孫にまで同じ顔をさせるなんて全部私のせいだわ」

「いいえ、違います。僕のせいです。琴乃一人に全て抱えさせてしまった。もっと早く交際のお許しを僕が頂けばよかったんです。そうすれば、彼女にも、乃蒼にも我慢させることはなかった」

「玲さんは悪くない。私があなたに全部黙っていた。何も言わずあんなひどい方法で別れたのも私よ」

「もうやめて琴乃、全部私のためにやったことでしょう?あなたは別れたくなかった。そうよね?乃蒼のことも本当に無理をさせた。琴乃ごめんね」

「お母さん」

「藤堂さん。琴乃のこと、よろしくお願いします」

 お母さんは玲さんに頭を下げた。

「お母さん!」

「乃蒼のためにも、家族が一緒にいるべきだとわかっていた。怖くて踏み出せなかった……私を許して……」

 母は泣き崩れてしまい、その場は先生に任せて退出した。



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