【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
第五章
家族として
玲さんは母に挨拶を済ませると、翌週にはご実家へ私達を連れて行きたいと言ってくれた。
「何を持って行ったらいいかしら?」
「乃蒼が好きな食べものでいいんじゃないかな。あっちで色々準備してくれてはいるだろうが、落ち着かない時もあるかもしれないからね」
「そうね。乃蒼の洋服と靴だけは新しいものを着せていきたいの。おさがりと着古したものばかりで、靴も汚れてる」
生活に精一杯で、乃蒼のものは基本的に咲ちゃんのおさがりばかり。新品があまりないのだ。
「じゃあ、琴乃の服と靴も買いにいこう」
「え?私は、いいの……ご両親はきっと乃蒼に会いたいでしょうから」
玲さんは私の鼻を長い指でかるくつついた。
「何を言ってるんだ。乃蒼の服さえ我慢していたということは、自分の物なんて何ひとつ買ってないんだろう?少し甘やかさないと琴乃はだめだな。さあ、乃蒼、まずはお買い物に行くぞ」
絵本を座って読んでいた乃蒼は、玲さんの方を見た。
「おかいもの?ばあばのとこいく」
乃蒼はもう一人のばあばの所へ行くと玲さんに言われていた。
「乃蒼とママのお洋服と靴を買ってから行くぞ」
「わあい、おかいものいく!」
乃蒼は可愛いワンピースと靴を買ってもらい、その場で着替えた。大喜びだった。
私は上から下まで玲さんの見立てたものを次から次と試着させられる。彼の着せ替え人形のようになってしまった。乃蒼までそれを見ながら喜んでる。
「どうだ、乃蒼。ママは綺麗だろう?」
「わあ、まま、絵本のおひめさまみたい」
乃蒼は目を見開いて驚いていた。そう言えば、私は乃蒼の前でスカートを一度も履いたことがなかった。いつもパンツスーツか、ラフな服装しかしていなかった。