【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「玲さん、これ……ちょっと……桁が……」

 私は服の値札をつまんで小声で彼に言った。玲さんは手を左右に振ると、何か店員に指示をしていた。

「さっき着ていたのもよかったからそれも包んでもらおう。服に合わせた靴やバッグを選んである。足のサイズは変わってないよね?」

「ねえ……玲さん、私の話聞いてる?」

「そんなことはどうでもいいから。ああ、こっちもいいな。だけど、僕以外の前で着せるのはちょっとまずい」

 ぶつぶついいながら私の服を次から次と選んでいる。何なの!

「ちょっと、玲さんってば、着て行くところもないから、服はこれだけでいいのよ」

「はー、琴乃。君は僕の妻になるんだろう?着る機会はたくさんできる。この程度で驚いていたらいつか卒倒するぞ。そう遠くないうちにパーティー用のドレスやアクセサリーも作るからな」

「えっ!?」

「琴乃はすぐ遠慮するから少し強引にいかないとね。そうだ、君に贈りたいアクセサリーがあって特注してあるんだ。近いうちにあがる。楽しみにしていて」

「ちょっと、玲さん!」

「すみません、これを着て帰りますのでこちらの服を包んでください。ほら、琴乃。そこの靴履いてみて」

「おひめさまのくつだー、のあもこれがいい」

 玲さんはハイヒールを抱えた乃蒼に言った。

「乃蒼はもう少し大きくなってからだよ。ほら乃蒼、ママにあげて。早く履いてみてって言って」

「まま、はやくーおひめさまのくつよ」

 乃蒼が私の前に靴をよちよちと抱えてきた。もう、何を言っても無駄だ。店員もニコニコとこちらを見ている。

 素敵なヒールの靴。こんな靴を履くのは何年振りだろう。そう、あのイギリスでの結婚式以来かもしれない。

「ぴったりです」

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