【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「蔵原先生、結婚してたなんて聞いてないぞ」
「そうだよ、この間まで指輪なんてしてなかったじゃないか」
「シングルマザーって聞いてたけど違うの?」
「そうだよ、あんた誰だ?部外者は入っちゃいけないんだぞ」

「私がシングルマザーって……誰に聞いたの?」

「そ、それは、学生課の……あ、いや、噂が流れていて……」

 私は呆気にとられた。玲さんは前に出て彼らをじろりと睨んだ。

「彼女が独身だと知って、毎回こうやって質問しながら隙を狙っていたわけか?」

 玲さんの声が一段低くなった。目が光ってる。さすがの生徒も一歩下がった。

「そ、そんなわけないじゃん」
「帰ろうぜ……先生の男、怖すぎ……」

 頭を下げながら急いで荷物を持って出て行った。玲さんは横を通る学生をにらんでいる。

「玲さん、睨みすぎです」

「琴乃。想像以上に危ない職場だな。あいつら完璧に君を狙ってた」

「玲さんったら、心配のしすぎです。私は子持ちと知っていたんですからさすがに対象外です。私なんて彼らから見たらおばさんです」

「何がおばさんだ。君は自分を知らなすぎる。前にも後をつけられたじゃないか」

「それは、その……」

 すると、出口を出たところに佐田君が立っていた。

「佐田君……どうして」

「藤堂さん、わかった?」
 
「よくわかった。あなたの言う通り、これはとんでもないところだ。夜の授業はさせたくない」

「そうだろう?」

「ふたりで何を言ってるの?」

「僕が彩菜に夜の授業を入れさせたくなかったのは、男子学生が君らを閉館時間まで取り巻いて色々理由をつけて側にいようとするからだ。囲まれて何かされたら抗えないだろう」

「佐田君ったら、さすがにそれはないと思う」

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