【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「また、そんなふうにおだてたってだめ。三か国語が話せて、国際女優で顔も知れている彼女に叶うわけないじゃない」

 玲さんはワイシャツを脱ぎながら、こちらに来ると私の鼻を長い指でつんとつついた。

「僕が欲しいのはそんな妻じゃない。君のような心が綺麗な人だ。言葉が通じなくても、なぜか心は通じるんだ。いずれわかると思うが、何よりそれが文化や宗教、言葉の違いを乗り越える鍵なんだ」

 彼はそう言うと私をぎゅっと抱きしめた。

「琴乃。今週末外務省の主催するパーティーがひとつある。できれば君をエスコートして連れて行きたい。そこで君本人に自信と自覚を与えたいんだ」

「何のパーティーなんですか?」

「海外向けの文化省主催のパーティーなんだ。日本の芸能関係者や配給先の企業はもちろんのこと、海外のエージェント関係者も参加する。外務省は橋渡し役だ」

 私はピンと来た。

「もしかして……日奈さんも来ますか?」

「文化親善大使だから多分招待されていると思う」

「ゴシップの噂を払拭するために私を連れて行きたいの?」

「今更だけどね。僕は元々君一筋だったと日奈にきちんと釈明させたい。それに、琴乃がいかないと僕は妻以外の女性をエスコートさせられる可能性もある。君は僕の左腕を他の女性に渡しても平気なの?」

 玲さんの妻は私だ。誰かと彼が手を組んでいることを思い浮かべただけで嫌だった。

「嫌です。あなたの隣を誰かに渡す気なんてないもの」

 彼の腕にすがってしまった。玲さんは私を急にぎゅっと抱きしめた。

「嬉しいよ、琴乃。君がはじめて僕への独占欲を見せてくれた。それなら一緒に行こう」

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