【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
『そうだよ、やっとわかったか。何度も恋人が日本にいると言っただろう』

 ケビンさんは彼の耳元に口を近づけて何事か言った。

『気をつけろよ、藤堂。奥さんは多くのスタッフに目を付けられてる。彼女ほど透明感のある人はなかなかいない。逸材を見つけたと思ったのに本当に残念だ。じゃあ、また』

 彼は苦笑いしながらグラスを持っていなくなった。

「琴乃、僕から離れるなよ」

 がっしりと私の手をつかんで離さない。

「離れていったのは玲さんじゃない。お仕事があるときは行ってくれて大丈夫よ」

「いや、これからは君を連れて回る。しかし、ケビンは相変わらずだな。あいつは美人とみるとすぐに声をかけて事務所に誘うんだ」

「そうなの?」

「君もイギリスデビューするところだったぞ」

「シンデレラにしてもらった威力はすごいわ。普段の私を見たらびっくりね」

「はー。また卑下した。君は本当に自分がわかってない。さっきケビンから忠告された。君はあちこちのエージェントに目をつけられてるらしい。こんな透明感のある人はいないと言っていた」

「ええ?!さすが芸能事務所の人ね。口がうまいのよ。信じたらだめでしょ」

「あのね、イギリス人はお世辞なんて言わない……これだから心配なんだよ……」

 ふたりでテーブルの料理を皿に乗せていたら、見たことのある人が眼には言って来た。

 あれは蓮見商事の若社長だ。何より驚いたのは、社長の後ろにいるのが灰原部長だったからだ。

「うそ、灰原部長……」

 私の呟いた声に気づいたのか、彼がこちらを見た。そして、私に気づいたのか、驚いた様子で私の所に来てくれた。

 玲さんは日本人の仕事関係者に声をかけられていた。私は彼に目くばせして、灰原部長の所へ行った。

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