【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「当時、蓮見ロジスティックスは全く住宅手当が出ませんでした。だから辞めるしかなかったんです。もしかして今でもそうですか?」

「ちょっと……蔵原君!」

「これははっきり言われたな。グループ企業の福利厚生については見直す必要がありそうだね。貴重な意見をありがとう」

「いいえ」

「ククク……」

 横で身体を折って玲さんが笑っている。

「あれ、君は外務省イギリス支局に長いこといた藤堂君じゃないか。久しぶりだね。日本に戻ったのか?」

「蓮見新社長。お久しぶりです。ようやく戻りました。会長はお元気ですか?」

「うん、おかげさまでね。もしかして、彼女は君の知り合いとか?」

「知り合いどころか、彼女は僕の妻です」

「ええ?!蔵原さん本当なの?」

 灰原部長が驚いている。

「はい、そうなんです」

「灰原君、逃がした魚は大きかった。なんということだ……こんな美人がうちにいると知っていたなら、藤堂君より僕にチャンスがあったはずだよ」

「社長、彼女に手を出さないでください。そういえば、社長は既婚者でしたね。そんなことあるわけないですね。大変失礼いたしました」

 蓮見社長は真っ赤になった。

「失礼な、全く君は相変わらずだな」

 ごほんと後ろで灰原部長が咳払いをした。

 蓮見社長がいなくなり、灰原部長も頭を下げていなくなった。

「もう、玲さん。社長にそんな言い方まずいじゃないですか」

「君に言われたくないぞ。社長に福利厚生を理由にやめたとはっきり言ったじゃないか」

「だって本当のことです。私が嘘は下手だって言ったのは誰だったかしら」

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