【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「琴乃、何かあった?どうしたんだ?」

 勘の鋭い玲に何もかも見抜かれてしまう。琴乃は笑顔を作り、彼を見た。

「何もないけど、玲さんのせいでお腹がすいちゃった」

「誰かさんのせいで、昼間からちょっと運動が激しすぎたかな?」

 数十分後、ようやく初詣に向かった。

 夜なのに、大勢が列をなして並んでいる。

「そんなに長く頭を下げていて、いったい何を願ったんだい?」

「……色々です。玲さんは?」

 彼は茶目っ気のある瞳を輝かせてこちらを見た。

「それはもちろん、早くこっち勤務になって毎晩琴乃と……いてっ!」

 私が彼の腕をつねったら、彼は私の手をとり上げて握った。

「もう、そんなことばっかり言ってると嫌いになるから」

「あ、そう。嫌いとか言って、僕をそんな目で見てるくせに……自覚があるんだろ?駅で僕に抱きついてきたのはどこの誰かな?」

「もう、嫌い」

 私が手を離そうとすると、両手で抱きしめられた。

「ほら、静かに。大きな声を出すと見られるぞ」

 木陰に入り、また唇を覆われる。自分から彼に身体を寄せ、むさぼり合うようにキスをした。

 この恋は夢。見ている間は幸せだ。だが、覚めるときがそう遠くないことに気づいた琴乃は、今のうちだけ夢の中にいたかった。

 * * *

 近くの店にふたりで入った。

「玲さん、これ少し早いけど誕生日プレゼント」

 私は彼の眼の前に箱を出した。

「何?え、本当に?」

 彼は包装を開けて、こちらを見た。

「これ、うわ、僕の好きなブランドだ」

 普段使いが出来るシャツだった。以前、イギリスで彼が来ていたブランド。

 こういうものが好きなんだろうと思ったので、最近のデザインのものを二枚買って来た。

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