【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
玲side2
昇格してからとても忙しくなり、時差のある琴乃との連絡はメールが多くなった。
大きな案件や本庁からの指名が僕宛に入ることがある。
外交官としてやりがいのある仕事を任せられるのは光栄なことだ。
僕はイギリスを拠点に、他国へ出張に入ることも多くなった。
聡明な彼女は僕の忙しさに理解を示し、不必要な連絡を控えてくれている。
同僚の恋人は、仕事が忙しくなると、かまってもらえないからと不機嫌になるそうだ。
僕の琴乃は決してそんなことを言わない。彼女はゆったりと構え、僕を支えてくれている。
何なら僕の方が、琴乃が不足して急に声を聞きたくなるほどだ。
もちろん、将来のためにも僕のキャリアにとって今が大事な時期なのはわかっている。
琴乃のとのことは、帰国が決まるまでのあと少しの辛抱だと思い、今は我慢して仕事に集中している。
彼女を実家に送って行ってから、あちらに行くことを控えるようになった。
どこかそっけない態度の彼女のお母さんには、最初にお目にかかった時から不安があった。
翌年の年明けに帰国後、琴乃からお母さんの病気のことを打ち明けられた。
僕との交際がどれほど琴乃に負担を強いていたのか、ようやく分かった。
ただ、海外との遠距離だし、交際といってもほとんどが会えないものだ。
だから、彼女のお母さんは僕の姿さえ見えなければ落ち着いているらしい。
しかし、僕の日本勤務は時間の問題だ。
僕は琴乃に帰国次第プロポーズするつもりだったし、本気だということを誠意をもって見せればきっと大丈夫だと思い込んでいた。
「藤堂君。その後どうかな?昇格して忙しくなったようだね」