【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 野原参事官が現れた。なぜか僕を気に入ってくれている。
 
「午後からイタリアへ三日間出張になります。想像以上に忙しくて正直大変です」

「そうか。でも君には外務省幹部も期待しているよ。日本の代表としてしっかり頼むよ」

「外交官を目指したのは、日本だけでなく世界の平和に少しでも貢献したかったからです。精一杯務めさせていただくつもりです」

 参事官は僕の横にきて、小さい声で言った。

「原口日奈さん、どうやらカンヌに手ごたえがあるらしい。今回はあちらの作品だから、公開は日本が後になる。賞を獲るとさらに盛り上がるだろうな」

「そうですね」

「君が取り持ったこの間のBBC取材も好評だ。彼女はイギリスの映画にも出ることになった。文化外交面でさらに忙しくなるぞ」

 ポンポンと嬉しそうに僕の肩を叩いた。

 日奈は想像以上に成功している。演技力もそうだが、元々大学時代に同じ外国語学科で英語もそこそこ堪能だった。

 彼女はフランス語、イタリア語なども自分で勉強を続けているようだった。

 海外志向はあの頃からで、成功を喜んでやるべきなんだろう。

 だが、僕の仕事と絡むことが増えてしまい、正直迷惑している。

 お礼だと言って事務所が食事をセッティングし、上司も最初は同席、最後はふたりにされてしまうのだ。

 昔交際していたというのが噂となり、日奈の態度から勘違いされている。

 日奈には何度も断ったが、お互い気持ちを残して無理やり別れさせられたのだから復縁したいと会う度に言われる。

 何を言われようと、今の僕は琴乃以外考えられない。

 日本へ帰国すれば日奈とは仕事上も無関係になる。もう少しの辛抱だ。

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