【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 ブチリと電話が切れた。怒りで頭が沸騰しそうだった。

 僕は急いで琴乃にメールをした。真夜中だったので、メールにしたのだ。

『連絡が遅くなってすまない。週刊誌はデマだから信じないでほしい。今の僕には琴乃だけだ』

 昔、彼女と交際していたが、既に破局していることや復縁は考えていないと説明した。

 彼女はわかったと返事をくれた。だが、あまりに物分かりがよすぎてこちらが心配になった。

 しばらくして、ホテルの部屋に野原参事官が訪ねてきた。夜のパーティーに合わせて、イタリア入りしていたのだ。

「やあ、藤堂君。遅くなった。会議お疲れ様。どうしたそんな顔して」

「参事官。原口日奈の記事、外務省は知っていたんですよね」

「……まあ、座らないか」

 彼は僕を座らせると、チェストにあるお酒を少し注いで僕の前に置いた。

「落ち着いたほうがいい。少し飲むんだ」

 僕はグラスをあおった。参事官も自分のグラスを持ってきて目の前に座った。

 そして空いた僕のグラスにさらにお酒を入れた。

「君は大事な会議中だった。まず安心してほしい、外務省は一応記事についてこれ以上追及しないよう要望書を出してある」

「え?」

「君は日本にいないし、うまくごまかせる。ただ、日奈さんはこれから忙しくなる。カンヌ受賞作品の公開は日本ではこれからだ。イギリスでの仕事も決まってる」

「そういう問題じゃないんです!」

「君が変に事を荒立てると、却って素性がばれたり、マイナスだ。まあ、正直しばらくは忙しくて結婚なんてできないだろうし、落ち着くのを待てば皆忘れる」

「僕は結婚を考えている交際相手がいるんです!」

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