【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「相手も君を信じているなら問題ないんじゃないか?芸能関係の記事なんて半分くらいは嘘だ。でも今回はまあ、悪い話じゃない」

「参事官!」

「日奈さんは語学も堪能、美人だ。君が学生時代彼女とつきあっていた気持ちはよくわかるよ。二人はお似合いだ。今なら事務所も賛成だし、何なら僕も大賛成だ」

「何を勝手なことを言っているんですか!僕は日本へ戻るんですよ」

「だがまた外地に出る。海外はパーティーも多い。カンヌ女優の原口日奈の夫が交渉するなら、厳しい外交案件もスムーズに決まるかもしれない。文化外交だよ。僕なら絶対彼女を選ぶ」
 
 僕は両手を握りしめた。

「いくら彼女が国際的な有名女優になろうとも、日奈と復縁はしません。すみませんが、出て行っていただけますか?パーティーまで一人にしてください」

「ああそうだ、藤堂君。絶対に自分から記者に連絡を取ったり、何かするなよ。これでも僕らは君を守ってるんだ。上司命令だ」

 参事官はグラスをあおると、カラにして、立ち上がって背中を向け出て行った。

 * * *

 僕はイタリアから戻ると、日本への一時帰国の申請をした。

 メールで釈明をしたあの頃から、琴乃の様子がおかしい。

 もちろん、あのゴシップが原因だとわかっている。だからこそ、夜中にも関わらず僕はメールで焦って釈明してしまった。

 しかし、彼女の返事は思った以上にあっさりしたものだった。

 僕を信じていたから大丈夫だと言ってくれたが、妙に物分かりがよく、日奈のこともあまり聞いてこなかった。

 彼女のことを黙っていたことを少しぐらい怒って、僕を責めてくれた方が安心できたかもしれない。

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