【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
琴乃の決断
その日の明け方。隣で眠る彼を見ながら、そっとベッドを後にした。
「玲さん、ごめんなさい……」
彼を一時帰国させてしまったのは、私のせいだった。
彼にはもう会わないつもりでいたのに、彼に会ってしまうと私は彼への気持ちを抑えられなかった。
恥ずかしいくらい、自分から玲さんを求めた。これが、彼と会う最後だと決めていたからだ。
私は新しい職場の独身寮に移ったばかりだった。
母のことも彼は聞いてくれたが、結局は嘘をついてしまった。
本当のことを話しても、何も変わらない。私の決断はお互いのためなのだ。
引き金となったのは確かに今回のゴシップだ。だが、それは玲さんのせいではない。優しい彼を追い詰めたくなかった。
玲さんはこのあと重要な国際会議に入るため、またイギリスに戻り次第、出国予定だと聞いていた。
彼とはまた連絡が取りづらくなる。今しかないと思った。
* * *
少し前のことだ。
出張から戻ってきた玲さんは、ゴシップの釈明をするため、メールの後でわざわざ電話もくれた。
「日奈のことは本当に心配をかけてごめん。でも、はっきり断っているから安心してほしい。僕が日本に戻れば彼女との仕事もなくなるだろう」
「でも、日奈さんの映画はこれから日本で公開だし、マスコミに宣伝とかで出ることが多くなるでしょ。記事のことも書かれるかもしれないから、しばらくはそちらにいた方が玲さんのためになるんじゃないですか?」
「実は今日、同じようなことを上司から言われた。イギリスにいるうちは手出ししてこないから、もう数年こちらにいないかと言うんだ。隠れてここにいるなんてまっぴらだ」
「……玲さん」